「ううっ…あぁっ…」


ゆづが必死に頑張ってるであろう部屋。


近付くと、ハッキリ彼女のうめき声が。


それくらい頑張ってんだな…


僕には…

何が出来る?


そう思ったとき…


思い出した。


この産婦人科には…患者の眠りを促すために放送がかかること。


放送とは…

音声ではなく…クラシック曲。


その傍らには…

絶対ピアノもあるはずだ。

「あの…ゆづの…
三ノ宮 悠月さんの分娩室での様子は?」


「何か…落ち着かないみたい。
やっぱり…不安なんだと思うわ。
貴方がいないと。」


やっぱり。

ゆづは寂しがりさんだからな。


「患者さんのためにクラシック曲を流す部屋…どこですか?
彼女を…落ち着かせてやりたいんです。」


これだけで…通じたようだ。
僕の意図が。


放送室に案内された僕は、すぐさま分娩室だけに音楽が聞こえるように設定し、 電子ピアノで、
以前聴いたときに彼女が落ち着くって言ってくれた曲を弾いた。


演奏を終えてすぐ、設定を元に戻すと、彼女に立ち会うため…再び分娩室に向かった。