それから数週間経ったある日のこと。


ホントに…油断できなくなってきていた。


いつ…子供が産まれてもおかしくない状況…らしい。

僕はね?
かなり心配なの。

大変じゃん?

僕が仕事行ってる間に陣痛きたらどうする?
とかね。

考えちゃうワケ。


「じゃあ、僕は仕事行ってくるけど…
一人で出歩くなよ?」


「わかってるって。
…もう…和ったら、ホント過保護。」


拗ねたように頬を膨らませながら返事をするゆづ。


「何かあったら電話しろな?」


僕の言葉にゆづが頷いたのを確認してから家を出た。


今日は外回りの仕事だ。

ただの外回りじゃない。

ゲームのキャラクターに声を吹き込んでくれる声優さんを探しにいくの。


その途中のことだった。


"その時"は、突然訪れたんだ。


まだ声優さんにコンタクトをとれてすらいないときに、電話が鳴った。
プロデューサーさんからだ。


『……和之か。
今、病院から連絡が入った。
子供さん、産まれそうだとよ。
行ってこい。
残業代から立ち会いにかかった時間分の給料、引いといてやるから。』


「あ…ありがとうございます!!」


急いでタクシーを拾って、ゆづのいる病院に向かった。