代わりなんて存在しない


あたしにとって貴方は貴方だけの存在で

彼は彼だけの存在で


彼が貴方の代わりになるはずないんだよ





*ちなみ視点*





「・・・・・・・・・どうしたんだよ」

「予告もなく来ちゃダメ?」

「そう言う訳じゃ、ねぇけど・・・」

「じゃ、お邪魔します」

「っな、おい!!?」


突然のあたしの訪問に、圭は目を見開いて、口をポカンと開けている。

そんな戸惑う圭を余所に、勝手知ったる他人の家、あたしはスリッパを出してリビングへと進んでいった。


出来るだけ、平然を装いながら。




「麦茶貰うね」

「あ、あぁ・・・」

「おばさん達、仕事?」

「あぁ・・・」

「日曜日なのに、大変だね」

「あぁ・・・」

「圭ってバカだよね」

「あぁ・・・」

「・・・・・・さっきから、同じ答えばっかりね」

「あぁ・・・」


先程から圭は同じ答えしか返してこない。

あたしの質問は、多分聞こえていないだろう。


「ね、圭」

「圭は、圭だよ」

「千夜に代わりは出来ないんだよ」

「確かに、あたしには千夜って言う血縁者が居ても」

「圭の代わりは出来ないんだよ」

「だって、圭は圭で、千夜じゃないでしょ?」

「幾ら遠縁の千夜だって、圭にはなれないんだよ」

「死んじゃったお父さんと、お母さんの寂しさは圭が埋めてくれたんだよ」

「今まで、あたしが寂しいって泣かなかったのは、圭のおかげなんだよ」

「千夜じゃなくて、圭、貴方のおかげなんだよ」