慣れたといえば嘘になる

でも嘆いても現状は変わらない



*ちなみ視点*



「ただいまぁ・・・」


時刻は既に21時を回っていた。

二度目に帰ってきた誰もいない家に、あたしの声が木霊する。



一度目に帰ってきたときにはまだ、窓から夕陽が差し込んで紅く色づいていた室内だった。

圭と別れ一度家に戻り、着替えをしてから圭の自宅で夕食を頂いた。

何時行っても圭の両親は温かく迎え、包んでくれる。

きっとあたしの両親の遺言だとか諸々関係なしに、圭の両親は優しくしてくれているのであろう。

だからついあたしも居心地の良さから時間を忘れ、夜遅くに帰ってくるのだ。

圭も、圭の両親も家に住めば良いと言ってくれるが、あたしが生まれ両親と過ごした想い出が数多くあるこの家が捨てられないために、曖昧な返事を返すばかり。

だが圭達も次第にあたしの意志を知ったのか、今ではあまり口にしなくなった。


玄関からリビングに入り、夏を思わせる独特の空気が家の中を満たしていた。

あたしはそれに眉を潜めつつ、電気をつけリビングの窓を開ける。

僅かに吹く風が頬を撫でながら室内へと入ってくると同時に、庭から虫の鳴き声が聞こえてくる。


「もう、夏が始まるんだ」


夏は、両親がこの世を去った季節だ。


誰に言うわけでもなく、呟いた。

その声に反応するように、虫の鳴き声が強くなった気がした。


「・・・お風呂入ろう」


窓を網戸にし、玄関の戸締まりをして部屋着などを取りに2階の自室へと足を運ぶ。
















寂しい訳じゃない。

独りが辛い訳じゃなかった。


だけど、