何時も独りで通る道が、

二人分の足音が響くだけで


胸が温かくなった




*ちなみ視点*





「お疲れ様でしたー」


夕方前から入ったバイトがあっという間に終了時刻を迎えた。

あたしの他に入ってる二人の先輩に社交辞令の様な挨拶をして外に出た。

従業員入り口は路地にあるから、妙に暗く、その所為か生温い空気が辺りを占めていた。


「(千夜本とに居るのかな?)」


期待と不安、半分半分が胸を占めていた。





道路沿いの柵に寄りかかり、ボォッと何処かを見つめながら彼は居た。

誰だってする行為なのに、千夜がやると何処か絵になり、目が惹かれてしまう。

現に行き交う人の殆どは千夜に目を奪われ、顔を紅くしたり、振り返ったりしている。

だが本人はそんなの気にしていないのか、それとも知らないのか、暢気に欠伸をしている。

そんな千夜を見て、溜息を吐きながら近づくと気付いたのか千夜が笑顔になる。


「ちなみ!」

「(・・・本とに来た)」

「・・・俺の顔になんか付いてンのか?」

「・・・何でもない。それより帰ろう」

「おぅ!」


上機嫌な千夜を帰り道へと促す。

すると千夜は笑顔であたしの隣に並び、鼻歌交じりに歩き始めた。

そんな千夜を疑問に思い首を傾げ、今日あった出来事を思い出すことにした。


・千夜の顔が綺麗なこと(・・・あたしが一方的に見つけただけだ)

・お昼前まで一緒に寝ていて、起きてからも暫くゴロゴロしていた(千夜のお腹の虫の音でブランチに起き上がった)

・ブランチ時にはニヤニヤしていた


・・・これか?


「千夜」

「んぁ?」

「どうしてそんなに機嫌が良いの?」