あの後直ぐにちなみはバイトへと行ってしまった。

急遽入ってる人が倒れてしまい、早めに出て欲しいとの連絡を受けたらしい。

俺が風呂から上がると、書き置きとバイト先への地図が置いてあった。

だからシンクにはまだ洗っていない食器あるんだと、納得した。

肩に掛けたタオルで髪を乱暴に拭きながら、ソファに浅く座り地図を見る。


「結構・・・街中だな」


拭いた拍子に飛び散ってしまう水滴が、地図に付いてしまわないように気をつけながら。

夕飯はちなみが作っていってくれた物があり、先に食べていてと言われていた。

ちなみはちなみで、帰ってきてから食べると言っていた。



でも、



「独りで食う飯って、・・・・・・」



寂しい以外、ないんだよな・・・



腰を深くし、崩れるようにして身を沈める。


チクン、チク


あの子にこんな運命を背負わせてしまった罪悪感からか、胸が痛くなった。

幾ら隣に幼馴染みの一家が住んでいようが、


この家と言う"箱"には、

もう、


あの子以外、住んでいない。

必然的に独りになってしまうこの空間で、

あの子は何を考えるのだろう。



自分も両親の後を追う?

それとも、


それとも、こんな運命を架した

神を怨むか?


「怨まれているとしたら、俺はどうしたら良いんだ・・・・・・?」


痛みを増す胸を押さえ、

潤み始めた両目を覆い、


世界を、

拒絶した。


只頭を占めるのは、

実際に未だ数回しか見ていない、



笑顔のあの子のことだった。