混乱中の二人を前にゆりちゃんは冷静そのもの


「じゃあどういうこと」

「モモはイマイチあんまりわからないみたいだから、程よーく恋愛の良さを伝えてくれればなぁって思って。いいでしょ?」

「いいでしょ…ってお前、」

「イヤなの?仕事放棄したのに?」

「それは……」


ゆりちゃん、それって、脅迫じゃ………



私は全然構わないから、鈴木くんも気にしないで


ここまで問い詰められる理由はないからそう言おうとしたのに、



「よしっ、わかった!」


「えっ、」


「わかったよ。わかった!俺が教えるよ!」


彼の宣言が教室中に響き渡る

途端に沸き立つ教室内


今まで他の人がいることを意識していなかった上に、物珍しそうに視線とざわめきが注がれて顔が赤くなる



………は、恥ずかしすぎる、



「じゃあ、よろしく」

そんなこと気に止めないゆりちゃんは鈴木くんの肩を叩いて、私へにっこりと笑っていった


「よろしくな、沢井」


掛けられた鈴木くんの声、返事をする前に大分遅刻して次の授業の数学教科担任がやって来て、鈴木くんは離れていった



こんな風に始まることが有り得るなんて、

あの時の出来事は私の想像の範疇を大きく外れていた



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