暗い気分になりながら、ゆっくりと、リビングのドアを開く。 そこには、ピアノ椅子に座った小さな女の子と、寄り添うように立つ母親の姿。 お母さんは、リビングに入ってきたあたしをそう無視で、盛んに女の子を誉めちぎっている。 「本当にいい音だわ。プロでもなかなかいないわよ」 お母さんの言葉に、照れたように笑う、女の子。 その光景は、二人で微笑みあう、仲のいい親子のようだった。