「浅倉さん、大丈夫だった?」
帰ろうとしたあたしたちの前に現れたのは西澤さんだった。
「あ、見てた?
うん、大丈夫だよ。
雄貴が庇ってくれたからね、怪我したなら雄貴かな。」
「こんくらいかすり傷だっつぅーの。
だから気にすんな。」
雄貴は、あたしの頭をくしゃって撫でた。
いや、撫でたより髪をグシャグシャとしたって言った方がいいのかな。
「そう、残念ね……。」
西澤さんがボソッと呟いたことには、あたしたちは気づきもしなかった。
「西澤さん、じゃまたね。」
「うん、またね。」
西澤さんは、あたしたちの後ろ姿を見送ったあとに言った。
「これから楽しみね」って。
これから起こることは、誰も想像してなかった。

