「そだ、雄貴。
携帯番号教えて?あと、アドレスも。」
「おぉー、教えてなかったっけ?」
「向こうにいるときに、携帯が水没してデータが消えた。
だから、恭ちゃんのも知らないよ。
あ、聞いとけばよかった。」
「んじゃ、恭介のも一緒に赤外線で送信すんわ。
後で恭介にも連絡しといて。」
「了解。
じゃ、またね。」
携帯を扱うのに夢中な雄貴は、左手を挙げてヒラヒラと手を振った。
雄貴と連絡先を交換して、あたしは自宅にとたどり着いた。
「そういえば。
あいつはまだ……持ってんのかな。」
そう言った爽華は、アクセサリーなどが入った小さな木箱を取り出した。
そこに入ってる小さなペアのストラップ。
「捨ててなかったっけ。」
高校3年生の学園祭で、カップルじゃないのにベストカップル賞でもらった景品。
あの頃は、まだよかったっけ。
いくらあたしが気にしてなくとももう戻れないんだよね。
あの頃の関係には。
二人の間には、見えない大きな溝がある気がしたから。
「誰?」
着メロが静かになったあたしの家に響く。
「保さん…。」
内容は、飲み過ぎて明日の仕事に差し支えのないように。
というものだった。
「いつまでも、子供みたいに扱って。」
そんなさりげない優しさを与えてくれる保さんを好きになったんだ。
首に下がるチェーンのついた婚約指輪。
あと、約束の時まで。
約7ヶ月。

