『喧嘩をすれば全員病院送り』
『刑務所に入ったことがある』
『ヤクザと繋がっている』
『目が合ったら殴られる』
『タメ口聞くと半殺し』
『やばい薬をやってる』
などなど。他にももっとひどい噂がわんさかある。
確かに喧嘩すれば病院送りにすることもあるし、ヤクザの知り合いは何人かいるが別にヤクザだから知り合いなんじゃなく知り合いがヤクザだったって話なだけだ。
刑務所なんて入ったことないし、そこらへんはぬかりなくやってるし、喧嘩売られたら買うけど目があっただけじゃ殴らないし、タメ口きいたからってそんなことしない。
ましてや薬なんてやってない。
まぁそういう6割(微妙)嘘のひどい噂が流れているため、ほとんどの一般人は近づいてこない。
普通の不良もだけど。
喧嘩売ってくるやつ以外。
なので、この学校じゃ頭というけともありまともに絡んでるのはここにいるヤスともう一人。
さらに初対面では喧嘩関係以外で普通に話しかけて来たのはほんの少数。
「なんか、あいつん時みたいだな」
いつのまにか上に上がってきたヤスが、少し懐かしそうに、
少し、悲しそうに優しく笑う。
………今はここにいないアイツ。
ちらりと立ったまんまのヤスに目を向け、視線を落とす。
くわえてたタバコを口からそっと離し、小さく、口を開いた。
「………あぁ」
ふせた長い睫毛の下の瞳は、どこか悲しげに揺れていた。