「いや、さっきそこで黒髪ストレートの美人とすれ違ったんだけど………会った?」


………黒髪ストレートの美人………あいつ、矢野か。


「あぁ。さっきまでここにいた」


そう言うと少し驚いた顔をした。


「……へぇ。一緒にいたの?いつの間にそんな仲に……。
いつ抜け駆けしたんだ?」


ヤスが冗談なのか本気なのか黒いオーラをまとわせ、一見真剣そうに言った。


「……い、いや?あいつが先にここで寝てただけだよ。俺は寝床を奪われただけ」


若干その雰囲気に怯みながら答える。


「……めずらしいな。人がここに来るなんて。
要のこと知らなかったのかな……?」

「いや、知ってた。しかもフツーに話しかけられた」


そういうと、ヤスは少し大袈裟に目を見開いた。


「…おぉ、そりゃ大物になるかもしれんな……。
“あの”日高 要に初見から普通に話しかけるとは……」


そんなことをいいながら、うんうんと首を立てに振っている。

要はそれを目の端で捉えながらタバコをふかす。


“あの”日高 要


そう言われるのには、まぁ一応理由がある。