「ありがと」
そう言って微笑むと、彼は固まった。
「?なに?」
自分を凝視して固まっているのを不思議に思い、そう問いかけてみる。
「……別に」
そう言いながら気まずそうに視線を外された。
それを不思議思いながら、あまり気にせず梯子を下りる。
「あ」
そう、突然彼が声を上げた。
下に向けてた視線を、上げる。半分まで降りてしまってるから、たぶん彼からは顔しか見えないだろうけど。
「名前」
「は?」
単語だけ出されて思わず聞き返す。
「だから、名前。自分のだけ知られてんのとか気持ち悪い」
……まぁ、はっきり言う子だこと。
「あー、言うの忘れてた」
まぁ確かに彼の意見には同意見だ。
「あたし、矢野 麗(ヤノ レイ)。
今日から転校してきたの。よろしく」
それだけ言うと屋上を後にした。
