「会ったことなんてないよ」
日高 要の眉間にはさらにシワが刻まれる。
「別に、珍しくもないでしょ。会ったこともない人があんたの名前知ってるなんて。
だってあんた、この学校の頭なんだから」
そう言うとどこか腑に落ちないような顔をしたが、その後に納得したような顔をした。
「…………まぁ、確かに」
………こいつ、頭弱いんじゃない?
そうは見えないけど、と思った後に学ランの下の柄シャツを見て、「………やっぱ見えるカモ…」とか思ってしまった。
「ま、そういうこと。風の噂だよ。噂」
「よっ」という掛け声をかけて勢いよく立ち上がる。
いっぱいにのびをする。
あー、ちょっと肩凝ったかも…。
「……なぁ」
不意に声がかかる。
「ん?」
「………。やっぱ、なんでもない」
何かを言いかけて途中で止める。
その様子が気になり、そちらに目を向けた。
「……なに。言いかけたなら言いなよ」
「………」
それでも口を開かない彼に首を傾げる。
