「………ん」
……タバコの匂いがする。
あいつが吸ってたのと同じ匂い。
ずいぶんの間、嗅いでない匂い。
ゆっくりと意識が引き戻されていく感覚。
うっすらと目を開ける。
(………どこ、ここ)
コンクリートのような感触。っていうか目の前にもコンクリート。
(身体いたい………)
そこで思い出した。ここは屋上だ。
ごろりと上を向く。
青く、広い視界。
……あたしの嫌いな青。
(………今、何時だろ)
「起きたか……」
突然、声が聞こえた。
(……?)
キョロキョロと辺りを見渡そうとして、すぐにその姿を確認出来た。
ねっころがったままそいつに目を向けた。そいつはこっちにちらりと顔を向けただけで前を向いてる。
(あ、こいつ……)
知ってる。
と思う前に、そいつの手もとに目がいく。
その手にはタバコが人差し指と中指に挟まれてる。
さっきの匂いはこいつだったらしい。
自分の上半身を起こす。
そこで気付いた。
毛布が掛かってる。
それを凝視してるとまたもや声がかかった。
「それ、俺の」
