私の中の子供達

ポケットの財布に貰った名刺を入れて、自分の名刺を取り出す。最後の1枚だ、休みの日でも持ち歩いておくもんだなと思った。


「はい、じゃあ俺の渡しておくよ。」


丁寧に両手で受け取る彼女。


「平井さんですね。頑張って覚えます!」

そう言って敬礼のポーズをする彼女は、声のトーンに迷いがなく頼もしく見えた。


彼女が先に出て俺の靴を出してくれる。

「はい、どうぞ。」


出された靴べらのタイミング、声のかけ方がまたニクい。


レジにはさっきの女性店員が居た。支払いをしている間に江崎さんはエレベーターを呼んでくれていた。


相変わらずこの時間帯、ビルの客は少なくエレベーターの中は2人きりになった。


「外、寒いですかね?」

「来た時はそれほどでもなかったけどね。」


何気にない会話をしつつ、本日のメインイベントが近づいてきた。



さあ、来い!心と耳の準備は万端だ!