なんとか気を入れ直して仕事を片付けた。勿論、集中している時は邪念が入り込む余地などないのだがそれでもふとした瞬間に、君の「いってらっしゃい」が僕の脳内で囁きを奏でる。そしてその度に君自身の事を、知りたくなるのだった。

トントン


その思いを遮る様に俺は机に散らかっている書類をまとめて封筒に入れ、鞄に閉まった。


さて、帰るか。


席を立ち、掛けてあったコートと鞄を持って周りの皆に「じゃあ、お先に。」と一声かけていく。


時間差でかけられる「お疲れさま」に軽く会釈しながらオフィスの出入り口に向かい、タイムカードを機械に突っ込む。


俺は時間を刻んだカードが出てくる瞬間が結構好きだ。仕事から解放されるという事と、トースターからパンが飛び出すのに似てて可愛らしく見えるからだ。