「ボーイさんが見てたけど、何してんの?」
サニイが真っ黒なバイクでやってきた。
サニイはバイクが好き。ホンダに乗っている。
「表で写真撮るって言ったら、遠くに行ったらダメだって心配して見ててくれたの。」
「へー。」
サニイがボーイさんに何事か声をかけ、2人で手をふって出掛けた。
バイクで走ること20分、場所はアンコールワット。
ここ、アンコールワットから朝日を見るのです。
結構観光客がいた。
でも、ヨーロッパ系というか、そんな感じの人が多い。
サニイが、こっちこっちと、ずんずん草むらに入っていく。
塀が見えてきて、塀に昇って座る。
穴場的な感じで、観光客の声も、風にのって、ひそひそとしか聞こえない。
透明な空気があたりをつつむ。
神聖な場所ってあるんだ…と4年前、初めてアンコールワットに来て思った。
その気持ちを改めて思い出す。
観光客のいる橋と、アンコールワットの中心部を両方見渡せる位置で眺めながら、
しみじみ思う。そして気づいた。
「あれだけ昼間日本人観光客いるのに、今、日本人少なくない?」
「日本人は、寝てる人が多いです。」
「なんで?」
「夜遅くまで騒ぎます。」
「どこで?」
「カラオケボックス。」
バカか?バカか日本人!?
朝日も見ずに、なんで、カンボジアまで来てカラオケボックス…。
朝日よりも、カラオケボックス!!
「もちろん、そうでない日本人だっていますよ。」
私も日本人だなあ…と思いながら、複雑な心境で朝日を待つ。
空が明るくなってきているけど、空も複雑そうな感じで…
ん?
朝日…昇ってない?雲で隠れてるけど…?
「まことに残念ですが…。」