「ダメです。

ここまで来たら引き下がれないんですよ…」


チャキッ…


リボルバー式の拳銃を向けた。

弾も入っている。


「…お前には足りないんだよ。」

幸大が言う。

「な、何がですか?」


「覚悟…いや、勇気がな。」

「何を言ってるんですか?」


「手が震えてるぞ?」

「それは、」


「人を殺す勇気も、人を殺す覚悟をする勇気もない。」

「どっちも同じですよね?」

閖の声が震えている。

「いや、違うさ。

人を殺すことと、人を殺すと決めることの差だ。」

「殺す覚悟くらい…」

照準が合わないほどに震え出す。


ザッ、

「な!?」

幸大が閖の手を抑え自分の心臓の位置に銃を固定させた。


「引けよ。」

「な、何を…」


「…。


ダメだな。」


ガッ、

幸大は銃を奪った。


「どうせ、自殺する勇気もないだろ?」

幸大が言う。


「…。

ここまでして…

ここまできて…

それでも失敗して…

私はどうすれば良いんですか…

私は一生…幸せになれないんですか!?」

閖が床に座り込む。

「だから言っただろ?

勇気が足りないんだよ。」