「ところでさ、幸大は屋上で麗美に何て言ったの?


教室に鞄取りに来たときめちゃめちゃやる気が溢れてたんだけど。」

真知が言う。

「…まぁ、強いて言うなら、麗美の名前を呼んだ。」

「それだけ?」

瑠璃が言う。


「まぁ、その他色々と言ったけど…

麗美が俺の話をちゃんと聞いたのは名前を呼んだ後だな。」

「名前を呼ぶと何かあるのか?」

渚が言う。

「まぁ、何となくの話だが…

麗美って家柄とか権威を振り回さないだろ?

まぁ、金持ち的な発言はするけど。

自分から天王寺コンツェルンの令嬢だとも名乗らなかった。


つまり、自分と家は別物って主張したんだよ。

無意識かは知らんが。


実際、麗美みたいな金持ちに近寄る奴らは天王寺コンツェルンの令嬢に近づくだけで、麗美自身には興味ない。

それが嫌なんだろ?」

「ああ。

たまに漫画とかでもあるよな。」


「なのに今回のことで麗美はいきなり天王寺コンツェルンの令嬢として落ち込んだ。

天王寺コンツェルンという後ろ楯あっての自分がなくなる。

父親も窮地。

色々と一気に衝撃が押し寄せて自分自身という壁が壊れて天王寺コンツェルンの令嬢である自分が出てしまったってところだ。」

「幸大君ってスゴいね。」

皐が言う。

「人心掌握のプロみたい。」

睦月が言う。