「うまくいきませんわ。

しょせんは夢物語ですの。」

「雨は降りそうもないな。」

「なんですの?」

「ドラマとかの悲劇のヒロインならこういう時はタイミングよく雨が降ってくれるんだよ。」

「それも夢物語ですわ。」

「だがドラマ的には合理的だ。

雰囲気を作るし、俳優が涙を流せない時も恰も涙を流してるかのように見える。」

「…。」

「逆に現実に偶然雨が降れば涙を流しても涙が隠れる。


ドラマってのも色々と考えられてる。」


「何が言いたいんですの?」

「雨が降るのはあり得ないことじゃない。

夢物語ではないだろ?」

「…現実は甘くありませんわ。

お父様の頑張りも無駄に…

…無駄ですわ…」


麗美の目が潤む。


「雨が降らないのに泣くのか?

人前で。

あのお嬢様を体現したお前が。」

「私だって…泣きたくもなりますの…」


「何があった?

天王寺コンツェルン以外にも何かあったな?」



「私のお母様は会社の話を聞き、病院に搬送されましたわ。

もとから体が丈夫ではありませんの。


前々から手術の予定もありましたの。

ですが…そのお金すら…」

ぺたっ。

麗美が床に膝をつく。