甲崎宅

書斎

「…ってわけで結局は真犯人はわかりませんでした。」

幸大が今回の話を報告する。


「そうですか。

でも完全に安心できなくとも娘たちが無事で何よりです。


ありがとうございました。」

甲崎は深く頭を下げる。

「まぁ、今度からは何かあったら一言言ってくれれば力になりますから。」

「はい。

今回の件はどうやって御礼をすれば良いのか…」


「ああ、その辺はあの二人の貸しと言うことで。」

「え?」

「もともと二人の頼みで甲崎さんを訪ねましたから。」

「ですが…」

「どうしてもと言うなら、

会社の方をしっかりと頼みます。


俺はまだ学生として青春を謳歌したいんで。」


「…はい。」

「じゃあ、俺はこれで。」

「本当にありがとうございました!」



甲崎は幸大が書斎を出るまで頭を下げたままだった。


「幸大君、帰るの?」

皐が言う。

「ああ。」

「幸大君、今日はありがとね。」
睦月が言う。


「礼を言われる筋合いはない。

今日のは二人への貸しだ。」

「…あ、そうだった。」

皐が言う。

「幸大君が相手だと貸しを返すのも一苦労だよ。

渚や瑠璃がいるから。」

睦月が言う。

「まぁ、大体のことは何とかなるよな、あの二人なら。


ま、そう言うことでまた月曜日に。」


幸大は甲崎宅をあとにした。