「せ、聖ちゃんっ!」


かくなる上は、味方の選り好みはしてられないわっ!普段はシスコンでウザイくらいの聖ちゃんだけど……今だけは味方になってくれるはず!!


すがる思いで聖ちゃんの待つ玄関にタタッと走り込むと、聖ちゃんは両手を広げてニッコリ笑って


「う、うぎゃぅ!!」

「さ、行くぞ、ミュー!
今日こそ誘拐されてこいよー!」

「い、いやぁぁぁあーー!!」


目の前にいる私をまるで米俵でも担ぐかのように横抱きにして


「総一郎!このままアマービレに行くぞ!
表に車回してこい!!ゴーイングマリー号、発進っ!!」


ニシシシと笑いながら、聖ちゃんは総ちゃんに大声で命令をする。



総ちゃんはハァとため息を吐きながら

「そんな大声出さないでください。耳が痛くなりますよ。」

そう言って車のキーを手に取る。



その後ろにいるのは壮絶美人な夜の蝶、赤いドレスに身を包んだミキちゃんに、クラブの黒服に身を包んだレオンくん。それに何やら怪しい機材を大量に持った陸ちゃんに、何やら凛々しい顔をした、パグのでんすけ。



「おおーっと。でんすけはハウスだぞ?連れてけねぇぞ??」


ニャハハと笑った聖ちゃんが、でんすけにハウスを告げると、でんすけは寂しそうな顔をしてトボトボとリビングに帰っていく。(ううっ!私もでんすけとお留守番したいっ!!)


美形がここまで揃うと迫力もあるし、眼福感もあるんだけど……この人たち、私を誘拐させる気なんだよね!と思うと悲しさでいっぱいになってくる。


半ば諦めながら、聖ちゃんの腕の中で、横抱きにされながらハァとため息を吐くと


「いいかお前ら。他の誰でもねぇ、俺様のカワイイ、可愛い、カワイイ、ミューを囮にするんだ。わかってるだろうが絶対に失敗は許さねぇからな!!」


聖ちゃんは頼もしいんだか頼もしくないんだか、馬鹿なんだか賢いんだか、よく分からない言葉を神崎ブラザーズに投げつける。


「わかってますよ、そんなこと。」

「当たり前でしょ?可愛い妹を囮にするんだもの。」

「被害は最小限に。成果は最大級に……デショ?」

「だーいじょうぶだよ!俺がちゃーんと監視して、ゴーイングマリー号から総兄ちゃんにみんなに指示出してもらうからさっ!」


「さすがは俺様の弟どもだ!
よく分かってんじゃねぇか!ニシシシっ!」


キリっとした表情でキメポーズして、笑ってる五人を見て……私は素直にこう思った。


ゴーイングマリー号って……何?!