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いつものように学校に行って、授業を受けて。お迎えに来てくれたミキちゃんに連れられて、いつものように神崎探偵事務所にやってきた私。


いつものようにお掃除して、いつものように細々したお仕事を手伝い、いつものように1日が終わっていく……そう思った頃


『昨夜未明、都内飲食店勤務の宮坂舞花さんが、遺体で発見されました』


事務所の奥に置かれたテレビからは随分、物騒な話が舞い込んできた。


『宮坂さんは会社帰りを狙われ、何者かに誘拐されていた疑いを持たれており、警察では誘拐・殺人も視野に入れ、犯人の行方を追っています。』



……怖っ!

会社帰りに拉致されて、殺されるなんて……どれだけの恐怖を味わえばいいんだろう。考えただけで、想像しただけでゾッとする。


まぁ……
私は幸か不幸か学校からの送り迎えは神崎ブラザーズに管理されてるから、一人になることはまず無いんだけど……。


何か背筋にゾワゾワするものを感じながらお母さんをフッと見ると、お母さんは食い入るようにテレビに視線を向けている。



「……ってか、この子、飲食店勤務って言ってるけど……多分ホステスだよなぁ。」

「あったりまえでしょ?
ほら、職場の近くの映像出てるけど、思いっきり銀座じゃん。多分……銀座の高級ホステスだったんじゃないの??」



事務所の職員の人がボソボソと何かを話しているのを盗み聞きしていると


「美優!」

「はっ、はいっ?!」


お母さんはテレビを見つめたまま、とても怖い顔をして


「美樹と総一朗に電話かけて。」

「えっ……?」

「例のことで話がある。今すぐ事務所に来い、そう言えばわかる。」


それだけを私に告げた。


理由が分からない……。
と思いながらも「どうして?」とか「なんで?!」とか尋ねられる雰囲気では全く無くて。


「わかった……。」


疑問を抱えながらも、私はミキちゃんと総ちゃんに電話をしてお母さんが事務所に来て欲しいという旨を伝えた。2人は少し黙ったあと、真剣な声をして

「わかった、って律子さんにつたえて?一時間以内に行くようにするわ。」

そう私に返事をした。