「あぁ。そう言えばそうですよね。少し前までは週3のお仕事だったのが、最近は週5ですもんね。」
「もしかしてオマエ…そっちの世界に目覚めたんじゃねーの?!」
パンを口に入れたままギャハハと笑う聖ちゃんをギロリと睨むと
「バカ言うんじゃねーよ、聖哉!ハマってない!断じてハマってない!!」
ミキちゃんはドスの効いた声で聖ちゃんを一喝した。
「ただ…最近、うちのお店のホステスが次々辞めて行くのよね。だから常に人手不足なワケ。」
「辞めて行く??」
ミキちゃんが勤めているのは銀座でも10本の指に入ると言われる高級クラブ。当然お給料も良くて入るのも難しいから、なかなかホステスは辞めない、と言っていたのに…どうしてなんだろう。
「しかも無断欠勤からのドロンが多いのよ。ママも首を捻ってるんだけど、引き抜かれた形跡もないし、原因がよくわかんないのよ。」
うーーーん。
どういうことなんだろう…。
ない頭を捻っていると
「へーえ。それって変だね。」
「変??」
「うん。ホステスが辞める理由って今のお店よりいいお店に引き抜かれるか、足を洗うかしかないと思うんだよね。キャバクラに勤めてるキャバ嬢ならいざ知らず、高級クラブに勤めてるホステスがそういう去り方するのって…変だと思う。」
大学生のくせに夜の世界を熟知した、陸ちゃんが語り始める。


