「ま、多少悔しい思いはしましたが、こちらの読み通りに話は進んでいます。勅使河原の裏帳簿は手に入れましたから、芹沢と勅使河原の癒着も明るみに出るでしょう。二人はもう逃げられません。」


そっか。
だから総ちゃんも聖ちゃんも、あの時素直に引いたのかぁ。⋯⋯今さらながら納得。


ウンウンと頷いた後、私は少し気になることを彼にぶつけてみる。



「ねぇ、総ちゃん。」

「なんです?美優。」

「さっき総ちゃんは『まさか美優も芹沢組に忍び込んでるとは思わずに』って言ったよね??」



気になっていたのは“も”って言う言葉。


“美優も”ってコトは他の誰かも忍び込んでた、ってことになる。


私が芹沢邸に入り込んでしまった時、警備は手薄だった。そのことは芹沢自身も妙だと思ったようで「誰にも止められなかったのか?」と聞いてきた。



不自然なんだ。どう考えたって。
こんな無計画な女子高生が忍び込めるほど任侠さんのお宅は甘くない。


誰かが警備の数を減らしたと考える方が自然なんだ。




「誰が侵入してるの??」


単刀直入に尋ねると


「へ~ぇ。鋭い!
さすがはババァの娘だな、ミュー。」


聖ちゃんはニシシシと嬉しそうに笑いだす。



その笑顔に確信を得た私が総ちゃんを見つめると


「ふふっ、さすがですね、ミュー。
さすが僕の妹です。」


総ちゃんも嬉しそうにニッコリほほ笑む。


「美樹とレオンに芹沢邸に忍び込むよう、指示を出しました。」