その目は人を殺すことなんて悪いこととも何とも思っていない目。暗くて重い、救いのない目。



芹沢は総ちゃんと聖ちゃんを交互に睨みつけた後


「お客人はお帰りだ。
丁重にお見送りしろ。」

「⋯はっ!!」


黒づくめ軍団に指示を出し、勅使河原議員と共に邸宅へと足を進める。



——ちょ、ちょっと!!

ホントにこのまま引き下がる気!?



「ね、ねぇ総ちゃん!!行っちゃうよ!?」


総ちゃんのスーツの裾をグイグイと引っ張るけれど


「⋯⋯しょうがありません。」


総ちゃんは諦め顔で首を横に振る。




「聖ちゃん!!いいの!?負けたままなんてイヤでしょう!?」


負けず嫌いの聖ちゃんを煽るけれど


「⋯⋯今回ばかりは仕方ねぇさ。
俺たちにとって一番大事なものは依頼よりも仕事よりもミューなんだから。」


極度のシスコン男はこんな頭の痛いコトを言いだす始末。




——もう!!

何よ2人して!!
弱虫!!聖ちゃんと総ちゃんの弱虫!!偽札騒動の時、ジークを追い詰めたあの気迫はなんだったのよ!!




情けない男二人をキィッと睨んで

「バカ!!弱虫!!」

2人に罵声を浴びせると

「言いたいことはそれだけかい??さっさとここから出て行きな。」

勝ち誇った顔した黒服軍団の一人がスッと玄関を指さす。




視界の遠くに見えるのは、芹沢と勅使河原議員の薄汚い背中。手を伸ばせばすぐ捕まえられるハズなのに届かない、この手のひら。


——なんとか追いかけられないかな。


そう思って駆け出してみたけれど


「美優、無駄な抵抗はやめなさい。」

「だ、だって!!」

「時には諦めも必要です。」


総ちゃんに抱き寄せられて、あえなく撃沈。



結局私たちは黒服軍団に連れ去られるがまま、芹沢組の大きな門の外に出ることになってしまったのだった