だけどそんな私の心の声は届くことなく


「わかりました。
今回見逃す条件は二つです。
一つは美優を無事に返すこと。そして僕達2人を無傷でここから返してくれること。この二つを守ってくれるのならば今日はこのまま帰ります。」


総ちゃんはこんな提案を打ち出し始める。



「随分ワガママだねぇ。俺たちはヤクザだよ?ヤクザが、このままやられっぱなしで許すとでも思ってるのかい?」


そんな芹沢の言葉にハァとため息を吐くと

「さぁ、どうでしょう。
こちらにとっては面白くない条件ですよ?ここまで追い詰めて白紙に戻すんですから、それくらい許してくれてもいいと思うんですけどね。」


バチバチと見えない火花が2人の間に飛ぶ。


ヤクザと警察
相反する立場にいる2人の攻防



にらみ合いが続いて、どれくらい経っただろう。



芹沢は突然フッと笑うと


「いいだろう。
お前の条件を飲んでやる。」


私の体の拘束を解き、ドンっと背中を押して私を総ちゃんの元へと返す。



「美優!」



よろけた私を総ちゃんが抱きしめる。
そんな私たちを見て馬鹿にしたようにクスリと笑うと


「俺に2度と関わらないと約束しろ。今度馬鹿な真似をしたら、どこにいようと探し出して必ずお前らを殺す。」



芹沢は総ちゃんをキツくキツく睨みつけた。