「ホレ、ミューの専用メット。」
「ふふっ、ありがとう。」
聖ちゃんがポーンと投げたのは赤いヘルメット。
極度のシスコンの聖ちゃんは
“バイクの後部座席には私以外の女の子を乗せない!!”
っていうのがポリシー。
(ホント…迷惑…。)
だからこのヘルメットは別名“ミュー・メット”っていう、ありがたくもなんともない名前がついている。
「さーて。じゃあ行きますかね。」
黒いメットを被った聖ちゃんが、
アクセルを踏むと、バイクからは
エンジンのいい音が聞こえだす。
「ホレ。後ろに乗んな、ミュー。」
聖ちゃんはバイクにサッとまたがって
クイックイッとシートの後ろを指さす。


