プシューと聖ちゃんの頭から白い白い魂が抜けそうになって、お母さんが手を緩めた瞬間。
「ま、そんなわけでアンタには普通の女子高生ライフを送らせてたわけだけど…。我が家の裏家業を知られたからには今までどおりってワケにはいかないよ??」
イスにドッカリと座って、タバコの煙をくゆらせながら、律子さんは冷たい目をしてこう言い切る。
「美優。あんたもあたしの娘なら腹をくくりな。」
「…え??」
「今までアンタは聖哉達の手によって守られながら大きくなった。それはアンタが望む、望まないに関わらず“アンタだけは普通の人生を歩ませたい”っていうこのバカ達なりの思いやりってヤツさ。」
いつもうるさい食卓に訪れた、ありえないほどの沈黙
聖ちゃんも、総ちゃんも、ミキちゃんも、レオン君も、陸ちゃんも、でんすけまでもが固唾を呑んでお母さんの言葉を聞き入っている。
「人に守られて、何も知らず安穏に生きる人生を選ぶか。危険と隣り合わせながらも自分で自分の人生を切り開く人生を選ぶか。
美優、アンタもオンナなら覚悟を決めな。」
そう言って
お母さんは私の前に
白い錠剤が2粒入った袋と
【神崎探偵事務所・所長】
と書かれた名刺を差し出した。
な、なんなのよ、コレ…
目の前に差し出された謎の物体におののいて
「これ……何?」
と訊ねると
「ちょっとした記憶障害を起こすクスリとあたしの名刺さ。」
見てわかんないかい?と言いながら、悪魔の顔してお母さんはフフンと微笑む。


