彼が眼鏡を外さない理由




ふ、と甘い吐息。

細くなるグレー。



「ほんと、可愛いすぎてどうかしてしまいたくなるだろう」



戯れのごとく、吐き出される睦言。


鼻腔を擽る、悪魔的な、だけどもどこか胸が締め付けられるような。

そこはかとなく漂う色を感じさせる悩ましい香り。


男との距離が縮まれば縮まるほどに濃密になるそれに、呼応するようにごくりと。

喉が鳴る。


は、恥ずかしい。

わたしが緊張してるのなんてすでにバレバレなのだろうが、それでもなんとか取り繕って平静を保っていたいと乙女心が騒ぐ。


へんだと思われたくない。



「なあ、」