彼が眼鏡を外さない理由




「う…」



ぴきぃと石化したように口ごもるのははや何度目か。

考えるだけでなんだか気が遠くなってくる。


三日月のように薄い微笑を、美しいと思ったら負けだ。


"綺麗な薔薇には棘がある"。

そんな言葉があるがそれをわたし風に解釈させてもらうと――"綺麗な笑みには毒がある"。まさにそんな感じである。


わたしは男の笑顔を見るたびにドキドキとするのだけれど、必ずしもそれは恋慕の情からくるドキドキではないのだ。

うまく説明はできないけど―…こう、ひやりと肝が冷えるような――それまでのほっこり幸せ気分がこっぽりとなくなっちゃったかのような――そんなドキドキ。

ちなみに前者のドキドキが心や身体で感じるものならば、後者は第六感で感じるもの。

なぜにヒヤっとドキっとするのかといえば、悲しいかなそれは今までの付き合いのなかで積もり積もった経験に実証されている。


まことに器用なことに男の笑顔はそのどちらも余すところなくわたしに感じさせてくれるのだ。