しかし一方で、ぐるぐると高速回転を強いられたせいでヒートアップした頭を、もうひとりのわたしが落ち着けとクールダウンさせて冷静になってみれば、男にここまでの動作がつくのはなかなかに珍しいということに気づく。
(普段は無駄な動きやそれに伴う体力ないしは精神力の浪費をことのほか厭う男だ。)
なるたけ少ない労力で円滑かつ良好な人間関係の進展を望む男は、それこそ相手の警戒心という防御壁を崩すべく愛想を振りまいたりはすれども(さすがは外資系エリート、実にあざとい)、わざわざ進んで場を盛り上げようなどという機転はきかない。間違ってもそれはありえない。
盛り上がるなら勝手にやれ。ただし俺は巻き込むな。巻き込むのなら他所(よそ)でやれ。俺に干渉してくれるな。
…そういう性格だ。そういう男だ。
ゆえにこの状況は4年に1度のオリンピック─…というと誇張表現だが、年に1度の我が子の運動会ほどには一見の価値があるのではないか。と、思う。
が、
どういうことかわたしには馬鹿にされているようにしか見えないのだ。これが。
きっと逆立ちしてみたって、逆再生してみたって、なにしてみたって、この弁舌の裏に隠されることもない悪意は姿を変えることはないだろう。
どうやら男はわたしの反応を観察することに飽いたらしく(そりゃあもっぱら黙っているだけだもの、しかたない)、男は一瞬真顔に戻る。
刹那、眩(まばゆ)いものを見るかのようにフ と目を細めると、すぐさま次の一手を指してきた。
「お嬢さん、」

