「…それは"I LOVE YOU"を訳したつもりか?」
問いかける、声。
"L"の発音を意識したからであろう、薄い唇からちらりと顔を覗かせた赤い舌が艶(なまめ)かしい。
吸い付くように唇の動きを追った。
眼球がわたしから独立したみたいにくるっと素早く動いた。
────"I LOVE YOU"
噛み締めるように何度も、何度も脳内で反芻する。
ああ、なんて綺麗な発音。
歌うように、流れるように、流暢なそれはするりと耳通りがいい。
すっかり忘我の境に足を踏み込みながら、うっとりと聞き入る。
「──…だとしたら?」
どうするの? ──挑むように目に力を込めて男を見た。
かなわないと知ったうえで、それでも牙を剥く。それで少しでも痕が残せれば儲けもの。…わたしの心理といえばいつもこんな感じだ。
いつだってこの男に一泡吹かせたくて、一矢報いりたくて、詮方(せんかた)ない。
なにかにつけて"お嬢さん"はって言う、その子ども扱いが憎い。
口元を歪めて"これだからガキは"って言う、その物言いが大きらい。
…それ以外は残念ながら余すところなく、とっぷりと惚れ込んでいる。

