どんな時だってわたしの目に触れるときはいつも付けたままの眼鏡に、男の本音はすべてひた隠しにされている気がして。
どうしようもなく心がざわめく。
わたしの思考ばかりが見透かされて、反対にわたしからは男の思惑は靄(もや)がかかったようになにひとつのぞき込めない。
レンズが視力を矯正してくれるものならば、それを内から見る者だけでなく、外から見る者にもその効果を発揮してほしい。
見えないものを見せてほしい。
グレーに瞬く鋭利な瞳を朧(おぼろ)にしてしまうのならそんなものは必要ない。
ぼやかさないで。隠してしまわないで。
本来矯(た)めるという行為がよい形にするために曲げる、あるいは曲がっているものをまっすぐになおすという意味合いなのだから、男の視界だけに留まらず、何重にも厚い皮を被った男の本性を、ひとを欺(あざむ)こうとする性格をも正してほしい。
荒れ狂う波の押し寄せる灰色の海は、きっと激情を孕(はら)んでいる。
白と黒との中間色にありながら、かけそきバランスを必要とする繊細さ。
灰色は実に奥の深い色だ。
おいそれと極めることなどできない。
だからこそ、魅せられて、囚われて、知らず知らずに泥沼にはまり込んでしまう。

