彼が眼鏡を外さない理由




この男を手に入れたい。

わたしだけのひとにしたい。


男の部屋にわたし以外の女の痕跡(ベッドに髪の毛は序の口だし、洗面台にわざとらしく置き忘れられたピアスとか歯ブラシとか化粧品とか)を見つけるたびに、胸がじりじりと焼かれるような思いがする。


いつかそのうち男が本命と呼べる女のひとを見つけ出して、"お嬢さんはもう用済みだ" "ここに来なくていい" "来ないでくれ"実際にそう言われる日がやってきて、わたしはこの部屋から追い出されてしまうかもしれない。

あのレンズ越しの底の見えないグレーの瞳は、わたしじゃない、ほかの誰かに取られてしまうかもしれない。

そんな不確かな不安に駆られるたびに、わたしのなかに排水口のようにぐるぐると汚い感情が渦を巻く。


どうしよう、どうしたらいいの?


なにが足りない?

わたしには、なにが足りないの?


そう問いかけてみればみるほどに止まらなくなるのはないものねだり。


…グレーの瞳に映りたい。

ほかの女のひとにするように、わたしにも触れてほしい。