彼が眼鏡を外さない理由




それはたとえるならば。


厚い雲で覆われた鉛色の空の切れ目から、日の光が差し込む瞬間のように。

肉眼では見つけづらい、消えてしまいそうな六等星の微かな光のごとく。


そんな、あえない望みを抱いているのだ。わたしは。


少しでもあの朧月のように仄(ほの)かに輝くグレーの瞳に映ることができるなら。

"わたし"という存在を認知してもらえるのならば。


どんな形だって、いい。

どんなに脆くても、儚くてもいい。


なんだってする。

なんだってしてやる。


投げやりの、剥き出しの欲望。

満たされないとは知りながら、まっすぐと突き進む。