彼が眼鏡を外さない理由




生まれたばかりの雛鳥が、はじめて見た動く対象物を盲目的に追従するのは生後初期のごく限られた時間だけ。

たったの13時間から16時間ぐらいらしい。

どこかでそんな話を聞いたことがある。


雛鳥のその行為が捕食や保温、それから危険からの保護を意味するのなら。

今のわたしはまさに対照的。

男とわたしの関係から得られるものはなにもないし、心は冷えきるし、自ら危険なものに首をつっこんでいるしという状態だ。


それにわたしは思うのだ。

ほんとうに賢いのならばこんな恋になんて、とっとと見切りをつけているはずだって。


かなわないって知りながらも何年も追いかけまわしたりしないと思う。


たとえ、無粋な実験者たちによって、雛鳥が動くオモチャを追いかけさせらていたとしても。

そのうち雛鳥も自分の力で生きていくために自立しようとするのだ。


わたしみたいに何年もずるい男に甘えて、依存したりしない。