彼が眼鏡を外さない理由




問いかける。

自問自答を繰り返す。


身体の奥のなにかが騒ぎ立てる。


ああ駄目だ。

辿り着く答えは同じ。



この男に抗う術を、わたしは知らない。



ひとを蔑視(べっし)する、色味を失ったグレーの瞳。

レンズ越しに見るそれは、分厚い隔たりを感じずにはいられなくて。


なぜだかわたしはいつも逆らえないでいた。

反抗心が頭をもたげるのは一瞬で、次の瞬間には従順に男の前にかしづいてみせる。


惚れた弱味、というにはあまりにも単純すぎた。

たった一言で片付けられるほどのものではないのだ。


ごちゃごちゃに、煩雑に、無秩序に。

こもごもの感情が混ざり合う。