あ、そっちか。




舜くんが指をさしたのは、右手に渡したゼリーの方。




「美織ちゃん……悠ちゃんのイトコから!いっぱいもらったから舜くんにもおすそ分け」




笑顔でそう言うと、舜くんもフッと笑ってくれた。




「じゃー、ありがたく受け取っとく。」




よ、よかった、受け取ってくれて…。




と安堵しているうちに、舜くんは私が手渡したゼリーをすべてポケットの中へと突っ込んで今度こそ帰った。




…帰っちゃった。




あ~、誕生日くらい聞いておけばよかった!




舜くんが戻ってきてくれたことに舞い上がって、色々聞くの忘れてた!




よし、明日何か聞こう、絶対。




なんでもいいから、取りあえずなにか一つは忘れずに質問しよう。




やっぱ、誕生日知れたらいいな。




ふふっとつい笑みがこぼれた私は、ふと空の上をゆっくり流れる雲を見る。




…本当は、血液型でも星座でも…。




舜くんのコトが一つでも知れればいい。




私は部屋に戻って、飲みかけの紅茶を飲み干した。




「ホントは………恋してみたいよ、舜くんに…」




舜くんを見てると、胸がギュッてなって、苦しくなることがある。




でも、痛くないし、嫌じゃない。




このなんともいえない、胸に何かが刺さってるような感じ。




取りたいけど、取りたくない。




甘いけど、甘くない……。




……体験も経験もした事のないこの気持ちに、なぜか“恋”って名前をつけてあげたいと思った。