「………あ」




私はそのまま部屋を出ようとして、やっぱり振り返った。




そういえば、今日美織ちゃんがたくさんゼリーをくれたんだ。




『コレ、篠崎さんに。』って帰りにいくつも渡してくれたし…。




せっかくだから、あげようかな。




鞄に入れてあった小さなゼリーを3つ掴んでから、部屋を出る。




舜くんは…どの味が好きなんだろう?




リンゴ、みかん、ぶどう………。




う~ん…。




この中だったら、イメージ的に紫色っぽいからぶどうかな?




でもオレンジも…透明もあるかもしれない。




って、私……。




舜くんのコト、あんまりわからない。




名前と年齢と、大学と紅茶が好きってことと、キス魔ってことと…。




あとは、あとは……。




あれ?私ってもしかして、舜くんについて、知ってることより知らないことの方が多いんじゃ…?




「ごめんな、手間かけさせて。………って、なんだコレ」




とぼとぼと階段を下りて行き、音楽プレイヤーとゼリーを渡すと、舜くんは怪訝な顔をした。




え、何コレって…自分で頼んだんでしょ。




私は、舜くんと同じ顔をして解答をする。




「なにって、音楽…」




「じゃなくて、こっち」