……行っちゃった。
もう少し…もうちょっとだけ、一緒にいたかったなぁ。
私は舜くんが見えなくなっても、ずっとその場に立ち尽くす。
…結局、やられっぱなしだった。
助けてもらったときは、不機嫌MAXだったし…。
機嫌が直ったと思えば、不意打ちでキスされちゃうし…。
舜くんのいいようにされ、なんだかんだで振り回されただけ…。
「ひなも食うか?たこ焼き。ちなみにな、篠崎はわたあめ売ってんだと」
ずっと一点を見つめている私に、悠ちゃんがまだ湯気が上がっているたこ焼きを差し出してくれた。
「あ、ありがとう…」
たこ焼きもそうだけど、舜くんの情報をくれて。
…そっかぁ、わたあめかぁ。
舜くんには似合わないかも…。
つまようじに刺さった、キレイに焼けているたこ焼きパクっと口に放り込む。
舜くんのところで売ってるわたあめ、無性に食べたくなってきた…。
なんて、たこ焼きを味わいながらも、思考は舜くんへと傾いてしまう。
…舜くんが店番してるくらいだから、きっと、可愛いお客さんがいっぱいくるはず。
一目ぼれしました、なんて告白されてたら…。
って私、別に彼女でもなんでもないのに…。
ただの家庭教師と生徒という関係なのに、なんだかモヤモヤする。
「か、考えるな……」
そう呟いて心の中でため息を吐いた私に聞こえてきたのは、いつの間にか上がっていた花火の音。
ヒュゥゥゥゥ~………ドドン!!


