ウチの高校でもイケメンってだけで人気になっちゃうから、きっと話したことすらもない女の子が記念にってボタンをちぎったんだろうな。




「穂見くん、人気なんだね………」




ボソッとつぶやくと、穂見くんは苦笑い。




…まぁ、こんな容姿だし、知らない子にボタン引きちぎられるのは当たり前か。




男子校の人が一つもボタンないなんて、他人から見たら何事!?って思うだろうけど…。




「人気もなにも、こっちの学校とはほぼ交流もないし……」




……だよね。




穂見くんは、こんな事態1ミリも想定してなかったと思うよ。




ため息を吐いて額に手を添える穂見くんを見て、思わず涙も止まった。




「私も記念に欲しかったな、ボタン」




…そして、無意識に出た言葉。




舜くんのは、もう無理だしね。




きっと、2年前に穂見くんと同じ状態になってたと思うし……。




…あぁー……。




一度くらい、男の子にボタンもらってみたかったなぁ。




女子校ってそういう夢がないからさ。




…この卒業式で、それだけが心残りかも。




腫れた瞼を隠しながら笑うと、穂見くんもくすっと笑う。




「じゃ、あげよっか」




…………え?




ぜーんぶないのに、どうやって?




不安げに首をかしげると、穂見くんが卒業証書の入れ物の中から、金色のボタンを取り出す。




「い、いいの……?」




ボタンを差し出され、受け取りながらもそう聞くと…。




「篠崎さんとうまくいくよう、お守り。…代わりに、春沢さんのちょうだい?」




穂見くんは優しい笑顔を浮かべてくれた。