あ~でも、家入りたいよぉ…。
ずっと黙って俯きながら葛藤していると、意外にも篠崎さんの方から話しかけてくれた。
「取りあえず、カギあけてもらえる?ここで時間潰すのも嫌だろ」
は、はい…!
私は黙って鞄の中から鍵を取り出し、ササッとドアの前まで移動してガチャリと鍵を回す。
なんか…知らない人を家に上げるって、緊張する!
思っていた以上に心臓がバクバクと動いて、薄っすらと冷や汗も出てきた。
あ~、何とも言えないこの感じ。
目を瞑って呼吸を整えていると、まだ聞きなれない、低くて冷たいような声が聞こえてくる。
「先どーぞ?」
そう言われたけど、フルフルと首を振った。
普通はお客さんが先だよね!
私が先に入るわけにはいかないよ。
ドアを開けて待っている私を見て、篠崎さんは何も言わずに私の家に入る。


