いや、違うよ。あの人じゃ……ない。
だって、悠ちゃんの紹介してくれる家庭教師って女の人だもん。
男の人なんてないないない!!
だから、悠ちゃんの言う“カテキョ”が見当たらないんですけど…。
でも手を振られたからには仕方なく、少し疑いつつも物陰から出て二人の前に立つ。
「おかえり、ひな♪」
そう言って私に笑顔を向けた悠ちゃんの隣で、悠ちゃんの隣にいる男の人が一瞬私を見据えた。
…まさか、まさかだよね…。
私はサーッと青くなる。
男だなんて聞いてないんだけど…!
ぼーっとその人を眺めていると、悠ちゃんが嬉しそうに言った。
「コイツが今日から、ひなの家庭教師!篠崎舜佑ってんだ」
…………やっぱり、私の予想は当たってたんだ。
一応頭を下げた私に、悠ちゃんが満面の笑みで私の頭をなでる。
悠ちゃん、何考えてるんだろ…?
いつもなるべく私を男から遠ざけたがってたのに。
チラッと悠ちゃんを見ると、カラッと笑い返される。
笑ってる場合じゃないよっ!
ホントにどうかしちゃったの!?
冷や汗が止まらないんだけど…。
手の甲で汗をぬぐう私。
しかし、本当に壊れてしまった悠ちゃんは、今度は篠崎さんに私を紹介しだす始末。
「で、こっちは春沢ひな。頼んでた生徒」
どーせ壊れた悠ちゃんの事だから、「バカな幼なじみがさ~」なんて話したんだろうな…。
私は篠崎さんを息を呑んで見つめる。