窓を打つ雨の雫が、したたる跡を目で追った。
灰色ににじむ世界は、静けさの中にとけていった。
ぼんやりと肘をつきそれを見てる私は、傘をなくしたわけじゃないのに…
喫茶店から出られなかった。
雨のシェードの向こうから来ないはずの人を待ち、待ち続けているからだった。



一年二年と年を重ねた。
あなたが召されたこの日には、必ずここで待っていた。
待ち合わせたこの店に、あなたがやって来る気がしたから──………
墓標にたって花を捧げるよりも、ここであなたを待っていたくて……。



五月雨(さみだれ)が思い出を綴りはじめる。
失われたぬくもりに、最近ようやくなれてきたよと。
テーブルの向こうにあなたの影を思いながら、窓を打つ雨とともに、私は過去にもどるのだ。



明日ねと、告げたあの時代に───。
時を止めたあの時代に───。
あなたといたあの時代に───。



今もまだ愛しているよと。