「この時間になると、ほとんどのお店が閉まってるんで…。ここが開いててよかったです。」


…そう、ゆっくりと話し始める。



「昼間は?」



…そう聞くと、不意に悲しそうな表情をしてから、


「…色々あって……。」



小さめの声で言ってから、微笑んだ。


…でも、さっきとは少し違う微笑みだった。



…それから、話を変えるかのように、



「角砂糖…あります?」


…と、問いかけてきた。



「あ、はい。どうぞ。」



コトン…。



「ありがとうございます……。」



そう言って、角砂糖をひとつだけコーヒーの中に入れ、ティースプーンでくるくると回す。



黒いコーヒーの中で、少し焦げ茶色に染まった白い塊は、すぐに溶けてなくなっていった……。



「…ミルクは?」

と聞くと。