俺は絶対につかまらない

「おはようございます。朝のニュースです。今朝午前5時頃、多摩川に水死体で浮いている男性を、犬の散歩に来た男性が発見し110番通報。水死体の男性からはアルコール反応が検出され、警察側の見解では、酒に酔った勢いで溺れたものと推測……」
 そんなニュースが朝の食卓に流れる。
「最近やたらと、こういうケースの事件が多いな」
 新聞を読みながら、早乙女幸之助が言う。
「そうよね、わたしもそう思うわ」
 幸之助の妻の清美が相槌をうつ。
「おはよ~」
 と言いながら、健二がリビィングに入ってくる。
「あっ、おはよう健二」
「おはよう母さん」
 健二はテーブルの椅子に腰をかける。
「あんたまた、夜更かししてたんでしょ」
「うん。みたい動画があったから、それをみてんたんだ」
 母親の清美が荒いものをしながら、健二に言った。
「なんだその動画って?」
「父さん知らないの? ネット上にある動画サイトのこと」
「知らないなぁ~」
「父さんって時代遅れの人なんだね」
「……」
 幸之助は新聞を読みながら押し黙った。
「なんだ知らないのか。がっかり」
「うるせぇー、ガキの癖に生意気言うな!」
「すぐにそうやって、ガキだってバカするけど、怒ればいいってもんじゃないんだよ、お父さん」
「うるせぇーって言ってんだろ、とっとと学校行け!」
 健二は幸之助の発言にニヤつきながら、ランドセルを背負う。
「お父さんて、バカだね」
 と、言いながら勢いよくリビィングを飛び出して行く……。