「…………」 鍵があいていてよかった。 …そう思うと同時に、 紫羽がいないかもしれないと不安になった。 「………」 早くなる鼓動を感じながら入ってみれば 自分が覚えているままの部屋。 ただ、 畳は冷えている。 物音ひとつ聞こえない。 紫羽がいつも座っている椅子には 本が一冊、寂しくぽつんと置いてあった。 そこに紫羽は…いない。 もう逢うことはできないのだろうか…? 俺は取り返しのつかない事をしてしまったのか? 絶望感に襲われた俺は ふいに横へ視線を移した。 「――…っ…」