君の檻から出されたなら。




「紫羽は本当に本が好きだな」



景色はもうすっかり暗くなっていて。

夕食を食べ終えると、また本を読み出す紫羽に俺はふと呟いた。




今思うと、いつも紫羽は本を読んでいる。


「俺の見る紫羽の姿はいつも本と一緒だ」


そう言って彼女に視線を移すと
彼女もまた、本から俺に視線を移した。


紫羽は俺にクスッと笑って


「……私が見る刹は
いつも空を見上げているわ」


そう言って彼女も空を見上げた。



「………そうか」


言われてみれば、
いつも見ているなと実感する。




「貴方を閉じ込めている私を異常だと、
…そう思う?」


空を見上げる紫羽の姿は新鮮だった。

「………」

視線は空に向いたまま彼女は呟いた。
その表情はあくまで柔らかい。



「……俺は紫羽しか知らないから。
なにが普通でなにが異常かなんて分からない」


そう答えれば
彼女は少し目を見開いて俺に視線を移す。


「………そうね」

眉を下げて笑った彼女。


「……刹、私は…貴方がいつか"運命の人"に出会えることを心から祈っているわ」


「…………」

すぐに柔らかい微笑みに変わった彼女の言葉は、意外なものだった。